損金不算入の役員賞与を期末に引当金計上した場合、税効果会計を適用して繰延税金資産を計上できるのでしょうか?

これについては、税効果会計を適用できず繰延税金資産を計上することはできません。

 

 

■将来の税金軽減(or負担)分を資産(or負債)計上する

 

詳細な説明をすると結構長くなってしまうので詳しい話はまた別の記事で書こうかなと思いますが、

税金の計算上、その期には費用・収益として認めないものの、翌期以降費用・収益にしていいもの(一時差異といいます)に対して、

法廷実効税率をかけたものを繰延税金資産・負債として計上するのが、税効果会計と呼ばれる会計処理です。

上場企業には適用が強制されますが、中小企業は任意の適用となっていて、やってもやらなくても良い処理です。

 

例えば、従業員に夏に支給する賞与を、3月の決算期末の時点で「大体今の見込みでこれくらいだろう」として、100万円を見込み計上したとします。

会計上の仕訳は、

賞与引当金繰入額 100  /  賞与引当金  100

という感じできります(単位は百万円)

 

ただ、税金を計算する上では、こういった見込みで計算した費用は費用として認められず、実際にその金額が確定した期に費用として認められます(上記の賞与で言えば、実際に従業員に支払ったとき等)

 

これは税効果会計上、一時差異と呼ばれるものに該当しますので、これに対して法廷実効税率(35%とします)をかけて、次のような仕訳を切ります。

 

繰延税金資産 35 /  法人税等調整額  35

 

上の例で行くと、

「将来100万円の賞与が費用として認められることで、税金を35万円安くすることができる権利のようなもの」

を、BS上資産として計上するわけです。

反対に、将来の税金を高くする一時差異もあり、こちらについては繰延税金負債として計上します。

 

■役員賞与引当金に税効果会計を適用できるか

 

では、役員賞与の引当金は税効果を計上することができないのかということなのですが、

役員賞与は、基本的に事前確定届出給与や利益連動給与に該当しなければ、税金計算上費用として認められないものです。

この2点に該当しない役員賞与を決算期末で引当金計上しても、それは支払った期においても費用として認められません(これを永久差異といいます)

先ほどの賞与引当金と異なり、将来税金を減らす効果がないため、税効果会計の適用ができない、ということになります。

もちろん、これが事前確定届出給与や利益連動給与に該当する役員賞与であれば、

それを引当金計上したぶんについては、将来の税金を安くする効果があるため、税効果会計を適用して、繰延税金資産を計上することができます。

 

税効果会計に遭遇した時にお役に立てれば幸いです。